五十肩の病期

五十肩は一般的に疼痛期・拘縮期・回復期に分けられますが、さらに細かく分けるとわかりやすいので、初期症状から緩解までを症状によってⅠ期からⅤ期に分けてみましょう。

五十肩の病期

Ⅰ期 疼痛期

肩に軽い痛みや違和感(何となく変な感じ、強い肩こり感、肩上肢のだるさ、時に軽い夜間痛やうずきなど)などを感じ始めてから、明らかな肩の動き(挙上制限)の悪さを自覚し始めるまでの期間をいいます。

棘上筋、肩甲下筋、腱板、長頭腱などの腱炎や筋炎が主です。

期間は一定しません。
1~2ヶ月前後で急速に進展していくものから、中には1~2年と持続して次期に移行していくケースもみられます。

Ⅱ期 疼痛拘縮進行期

明らかな挙上制限を自覚され始めてから、挙上制限が「五十肩の典型的拘縮域」(①外旋、結了動作の制限が強い、②外転域はおよそ45~100度の範囲内、③屈曲域は外転域より0~50度広い)に至るまでの期間をいいます。

Ⅰ期の炎症がさらに拡大し、肩峰下滑液包に及んできます。
肩峰下滑液包は内壁の滑膜に豊富な神経や血管が走っているため、痛みが激しく運動痛も一段と増悪します。
同時に自発痛・夜間痛も出現します。
この期間は全般的に短く、1ヶ月前後のことが多いです。

この時期の治療は、肩の運動時痛よりも自発痛・夜間痛の軽減が第一の目標です。
自発痛や夜間痛がある場合はなるべく動かさないようにします。
自発痛・夜間痛が軽減したら、拘縮しないよう動かしてもらいます。

治療を続けると痛みが軽くなっても、腕が上がりにくくなる場合もあります。
(Ⅲ期、Ⅳ期参照)

Ⅲ期 疼痛拘縮期

Ⅱ期における肩の運動制限と自発痛・夜間痛が増悪した状態で、疼痛がピークになります。
そして強い疼痛のみが顕著な緩和傾向を示すようになるまでの期間をいいます。
期間は2~4ヶ月で、中には半年前後も続く場合があります。

疼痛の種類は「夜間痛」「明け方の痛み」「動作時の瞬時痛」や「動作後の残存痛」などを訴えられることが多く、瞬時痛の程度や残存痛の持続時間が病勢の指標ともなります。

肩局所以外に上肢にかけての痛みを訴えられることも多いです。

痛みをとってから固まった関節を治すという、二段構えの治療が必要になります。

Ⅳ期 疼痛拘縮分離期

運動制限は以前より強いにもかかわらず疼痛だけが激減していく時期です。
期間は早いものでは数日から1ヶ月と短いのですが、中には半年以上も持続し、次の期間(寛解期)との境が明瞭ではなく非常に長くだらだら続くケースもあります。

この時期の治療の目的は
①短縮した筋の改善や癒着を剥離する
②上腕骨頭のスムーズな動きを取り戻す
③疼痛軽減に伴う運動量の増加による頚肩上肢の筋疲労を改善する
などがあり、以上を当面の目標として、外転域100度以上の改善を目指します。

また、腋窩からの触診で亢進した筋緊張が触れる場合は、積極的に腋窩部からの治療を加えていくものも有用です。
回旋筋腱板の筋肉の中で特に肩甲下筋を治療に加えることもあります。

運動療法は自発痛・夜間痛が完全に消失した時期に始めます。
自発痛・夜間痛はある時点で急に消失するわけではなく、一定の期間、出現、消失が何回か繰り返される移行期があるため、1週間以上安定した状態が続き、自発痛・夜間痛の再燃がないことを確かめてから運動療法を試みます。

Ⅴ期 寛解期

運動制限(特に外転制限)が急速に改善し始めてから五十肩が寛解するまでの期間をいいます。
期間は挙上制限の正常化ということだけをみれば、数ヶ月を要して徐々に改善していく例もありますが、1ヶ月前後と短い例も少なくありません。

ただ、挙上制限がほぼ消失した後も、しばらくは挙上運動時における肩周囲の突っ張り感は持続し、スムーズですばやい動作には、すぐには改善されません。

生活指導

  • 肩関節痛の発症誘因が日常生活から見いだされた場合、その原因を除去。
  • 夜間痛の場合は、タオルや毛布を用いた肩の保温が有効。
  • 入浴はぬるめの温度(39℃~40℃)で長い時間(20分間)つかる。

>五十肩のための鍼灸治療

>五十肩とは(広義・狭義)

このページは、千里堂治療院第65回研修会資料をもとに構成しました。
-参考-
出端昭男著『開業鍼灸師のための診察法と治療法5(五十肩)』医道の日本社/坂本歩監修『ポケット鍼灸臨床ガイド』アルテミシア/伊藤和憲著『はじめてのトリガーポイント鍼治療』医道の日本社/Andrew Biel著『ボディ・ナビゲーション』医道の日本社/大野弥・玉井和哉著『痛みと臨床1(1)「肩から上肢帯に痛みを訴える骨・関節疾患」』先端医学社/佐藤正人著『医道の日本第771号 特集「五十肩と発症から寛解までの全経過と治療法」』医道の日本社/美根大介著『医道の日本 第778号「東大式鍼灸治療の実際7」』医道の日本社/設楽仁・小林勉・山本敦史・高岸憲二著『JOURNAL OF CLINICAL REHABILITATION Vol.18 No.8 特集「リハから見た五十肩」』医歯薬出版/稲森耕平著『治療 Vol.85 No.7「こり(頚部痛、腰背部痛)と五十肩(肩関節周囲炎)」』南山堂

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