免疫と鍼灸治療
第50回研修会資料より
免疫とは
自己と非自己を識別し、非自己から自己を守る生態防御機構を免疫という。
非自己には、外から進入したもの(病原となる細菌やウィルス・移植や輸血による他人の細胞・傷口から侵入した異物、毒素)と、体内で発生したもの(老廃した細胞・癌などの異常な細胞)の2種類がある。
免疫系は白血球を中心として、さまざまな細胞や因子によって営まれる。
人間の体には、構成する数兆個の細胞が順序だって働けるよう、体内の状況は常に一定の状態に保つシステムがある。
これを恒常性(ホメオスタシス)といい、主に自律神経の働きによるもので、免疫はこの働きの一つ。
白血球
白血球は顆粒球、リンパ球、マクロファージに大別される。
白血球の数や働きは自律神経の影響を受ける。
- 顆粒球:54~60%。
細菌・古くなった細胞の死骸などのサイズの大きい異物を処理。
化膿性・組織破壊の炎症を起こして治癒させる。
アドレナリンレセプターを持つ。 - リンパ球:35~41%。
ウィルスなどの微小なサイズの異物を処理。
漿液性の炎症を起こして治癒させる。
アセチルコリンレセプターを持つ。 - マクロファージ:5%。
大きいサイズの異物を貪食する。
またリンパ球に抗原を認識・記憶させる。
白血球の自律神経支配の法則(福田-安保理論)
白血球中の顆粒球は交感神経、リンパ球は副交感神経の支配下にあり、自律神経の働きに伴って、それぞれ数と働きが変動する。
顆粒球、リンパ球にはそれぞれアドレナリンレセプター、アセチルコリンレセプターが存在し、交感神経と副交感神経のシーソーに動きに合わせ白血球の割合が変化する。
自律神経
交感神経と副交感神経の2種類があり、それぞれ相反した働きをしている。
交感神経は、活動状態に適した体内環境に調整する(心拍数を速める、血圧を上げる、グリコーゲンの分解、消化管の運動抑制など)。
副交感神経は緊張を解き、リラックスさせるよう調整している。
自律神経に影響を与えるもの
- 気温が低い・・・交感神経
- 気温が高い・・・副交感神経
- 湿度が低い・・・交感神経
- 湿度が高い・・・副交感神経
- 高気圧(晴れ)・・・交感神経
- 低気圧(曇り/雨)・・・副交感神経
- 冬・・・交感神経
- 夏・・・副交感神経
- 昼・・・交感神経
- 夜・・・副交感神経
- 活動的な生活(身体、精神的ストレス)・・・交感神経
- 運動不足、過食、リラックスした生活・・・副交感神経
自律神経は生活習慣や外界の環境などにより、交感神経が優位になったり副交感神経が優位になったりと、一方が固定化されたり、長期化したりはしない。
自然とゆり戻しが起きて、心身の活動を調整している。
偏った生活習慣によりゆり戻しがなくなると、自律神経のバランス失調を引き起こし、免疫系の破綻へとつながる。
ストレスの弊害(働き過ぎ・心の悩み・薬の飲み過ぎ)
顆粒球過多
・過剰な顆粒球は常在菌を攻撃。化膿性の炎症を引き起こす。
→急性虫垂炎・膵炎・ニキビ・口内炎・化膿性扁桃炎
・顆粒球は活性酸素を放出しながら死んで行く為、組織破壊が進む。
→ガン・胃潰瘍・潰瘍性大腸炎
アドレナリン過剰作用
・血管が収縮し、血行障害・虚血状態が起こる
→肩こり・顔面麻痺・静脈瘤・めまい
・排泄・分泌機能の低下によるため込みの促進(副交感神経の働きの抑制)
→便秘・胆石・尿毒症
リラックスの害(食べ過ぎ、運動不足)
リンパ球の増加
・増えすぎたリンパ球は本来無害な異物(抗原)にも敏感に反応する。
→アトピー性皮膚炎・気管支喘息・花粉症・通年性アレルギー性鼻炎
アセチルコリンの作用
・プロスタグランジンの増加=血管の拡張、知覚神経の過敏、発熱
→痛みやかゆみの亢進・偏頭痛・のぼせ
・排泄、分泌能力の亢進
→下痢・骨粗鬆症
鍼刺激の自律神経への影響
メカニズム
・四肢刺激は迷走神経(副交感神経)胃枝活動の亢進=胃運動の亢進がみとめら れ、腹部刺激では交感神経胃枝活動の亢進=胃運動抑制反応がみとめられる。(動物実験によるもの)
・足三里への刺激により心拍数減少、腎交感神経活動の抑制にともなう血圧降下がみとめられる。(動物実験によるもの)
・T細胞やNK細胞の血中への移行促進。免疫力上昇。
鍼刺法
・皮膚・皮下・・・交感神経α系機能亢進、副交感神経機能亢進
鍼刺時の条件:座位・呼気時・痛みが無い事。
足三里・外関がより有効。
・筋・筋膜・・・交感神経β系機能抑
鍼刺時の条件:臥位・雀啄10秒以上の連続刺激。
交感神経反応は副交感神経反応を抑制する。
疾患の紹介
下記の3つの疾患以外にも潰瘍、関節炎、パーキンソン病、不眠など多くの疾患が免疫システムの不調から起こるとされている。
子宮筋腫
血流が悪化すると、子宮の細胞が障害される。
しかし、細胞同士をつなぐ繊維芽細胞には血流障害に強いという特徴があり、冷えから子宮を守ろうとして増殖する。
結果筋腫ができあがる。
血流が改善されると、必要がなくあった繊維芽細胞は吸収され、筋腫は小さくなる。
不妊症
通常妊娠適齢期の女性は、エストロゲンの分泌によってリンパ球の多い副交感神経優位の体調となっている。
しかし、体の冷え・心の悩みなどのストレス・NSAIDs(消炎鎮痛薬)の使用で交感神経が刺激され続けると、増加した顆粒球が卵巣や子宮に集まり、粘膜の炎症を引き起こす。
妊娠中毒症
妊娠中の女性は顆粒球やNK細胞などの白血球を子宮に集め、母体と胎児が攻撃しあうのを防いでいる。
しかし白血球が増えすぎると、胎児が攻撃されて流産の恐れがでてくる。
これが妊娠中毒症で、高血圧や腎障害による蛋白尿など母体に影響が及ぶ。
母体の体力不足やストレスによる体調不良など妊娠に耐えられない状況になった時、交感神経緊が緊張し顆粒球増多によって引き起こされる。
このページは、千里堂治療院第50回研修会資料をもとに構成しました。
-参考-
安保徹著『免疫革命』講談社/安保徹著『史上最強図解 安保徹のこれならわかる!免疫学』ナツメ社/西条一止著『臨床鍼灸治療学、臨床鍼灸学を拓く-科学化への道標』医歯薬出版/安保徹・福田稔著『「免疫を高める」と病気は勝手に治る』マキノ出版/教科書執筆小委員会『はりきゅう理論』医道の日本社/久野みゆき・安藤啓司・杉原泉著『カラー図解 人体の正常構造と機能〈9〉神経系2』日本医事新報社/西條一止・熊澤孝朗監修、川喜田健司編著『鍼灸臨床の科学』医歯薬出版
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