顔面神経麻痺とは

顔面神経麻痺は、12本ある脳神経のうちの7番目の神経の異常で起こる麻痺で、一般に「顔面麻痺」と呼ばれます。
顔面には表情を作る筋肉(表情筋)が約20個あり、これが動かなくなった状態のことを言います。
顔が激しく痛むことは少なく、顔が動かなくなる(表情が作れなくなる)のが主な症状です。
神経が障害された場所により、涙液(なみだ)の分泌障害、聴覚過敏、味覚障害などの症状を伴うこともあります。

また、顔面「神経痛」と言う方がありますが、これは5番目の神経(三叉神経)の異常によっておこる三叉神経痛と混同したものです。
医学的には顔面神経痛という疾患名はありません。


顔面神経麻痺の分類(中枢性麻痺と末梢性麻痺)

顔面神経麻痺は、中枢性麻痺と末梢性麻痺に分かれます。

大脳皮質から皮質延髄路、皮質網様体路など、顔面神経核に至るまでに原因がある場合に起こる顔面神経麻痺を『中枢性顔面神経麻痺』と言い、主に脳梗塞や脳腫瘍など、脳実質の病変が原因で発症します。
顔面の上半分にある筋肉は、左右の大脳皮質によって支配されているので、麻痺の程度は軽症となる場合が多いのが特徴です。
これは、右側が損傷を受けた場合でも、左側の機能がバックアップの機能を果たすためです。

一方、顔面神経核から顔にいたるまでの神経経路(顔面神経管および顔面)で起こる麻痺の総称を『末梢性顔面神経麻痺』と言います。
顔面の下半分にある表情筋は、片側のみの大脳皮質に支配されています。
したがって、左側の大脳皮質に損傷を受けた場合、右側の表情筋に麻痺が発症します。
このため、末梢性顔面神経麻痺の場合は片側のみの顔面麻痺を生じ、機能や表情に左右差が生じます。

これが中枢性麻痺と末梢性麻痺の大きな違いです。


顔面神経麻痺の原因

顔面神経麻痺の70%以上は、ある日突然に起こる麻痺で、顔に違和感(口から水がこぼれる、顔にこりがあるなど)を感じた人が、鏡を見てはじめて顔が歪んでいることに気がついたり、人に言われて分かることも多いようです。

このタイプはヘルペスウイルスというウイルスの感染症が原因と考えられており、ベル麻痺と(ラムゼイ)ハント症候群の2つに分かれます。

ベル麻痺は、突発性麻痺とも呼ばれる原因不明の突然に起こる麻痺の総称で、最近では単純ヘルペスウイルスが原因とされることが多いようです。
対して、水泡帯状疱疹ウイルス(背中にできることの多い、いわゆる帯状疱疹の原因のウイルス)が原因であるものがハント症候群です。

ベル麻痺は、顔面神経麻痺全体の70~80%ほどを占め、ハント症候群が10%ほどで、ウイルスの抗体検査で確定診断を行います。
生まれつきのもの、外傷や腫瘍切除に伴うもの、中耳炎手術後、脳卒中後遺症などが残りの顔面神経麻痺の原因としてあります。

ベル麻痺

ベル麻痺の原因としては、疲労やストレス、風邪、急な寒さ、妊娠などが知られていますが、これらの要因により単純性ヘルペスウイルス(多くの人が自然に感染していて、顔面神経の奥の方(神経節)に住み着きおとなしくしています)が神経細胞内で増殖し、その結果、神経線維の炎症が起こり側頭骨内で顔面神経が腫れることにより、突然に顔面の麻痺が生じます。

ベル麻痺では原因がはっきりしないことも多く、特発性麻痺とも呼ばれます。

ベル麻痺の予後は良好なことが多く、薬物治療などにより、全体の80~90%程度は1年以内にほとんど後遺症を残さずに治りますが、残りの10数%に病的共同運動を伴う不完全麻痺が残り、数%に完全麻痺が残ります。

なお、発症年齢が比較的若い場合は経過は良好です。

ただし、年齢に関係なく、初めの麻痺症状が重篤な場合は、治療を行っても麻痺の残る確率は高くなります。

ラムゼイ・ハント症候群

ベル麻痺とともに末梢性顔面神経麻痺の2大原因の一つであるハント症候群は、顔面神経麻痺全体の10%ほどを占めます。

原因は、小児期にかかる『みずぼうそう』のウイルス(水痘・帯状疱疹ウイルス)が顔面神経節内に残っており、体調不良や疲れ、ストレスなどにより免疫力が低下したときに、この潜んでいたウイルスの再活性化にともない顔面神経が傷害されて発症すると言われています。
のどの痛み、耳の周辺の発赤と水ぶくれ、耳鳴りなどが主な症状で、ベル麻痺と区別がつきやすいものですが、二つの区別のつかないこともあります。

ハント症候群は、ウイルスの抗体検査で確定診断を行います。
治療は副腎皮質ホルモン(ステロイド)や抗ウイルス剤の投与ですが、発症後の治療開始が遅くなるほど、顔面神経麻痺の後遺症が残る確率が高くなります。

また、ハント症候群の方がベル麻痺よりも麻痺の後遺症の割合が高くなります。

その他の原因

交通事故・スポーツ外傷などによる外傷性麻痺、腫瘍性麻痺および術後性麻痺があります。

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このページは、千里堂治療院第107回研修会資料をもとに構成しました。

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